経済・政治・国際

サッポロビール2年分

サッポロビールが「低プリン体」を旗印に
イチオシ商品としてPRに務めていた第3のビール「極ZERO」が、
実は「発泡酒」に該当する成分だったことを指摘され、
国税庁に追加納税。

その額は100億円超で、
サッポロビールの年間利益50億円の2倍。

儲け2年分を税金として持って行かれ、
特別損失を出してしまう結果となった。

サッポロはかつては「業界の雄」だったが
現在は最下位に沈む。
本業では売り上げが出ず、不動産事業で補填。

飲料大手のポッカを傘下に収め、
さあこれから…というところでこのつまづき。
株価も下げ止まってしまった。

切り札のはずだった「極ZERO」は
発泡酒として再発売せねばならない。
価格帯も、発泡酒だから「麒麟淡麗」と同レベルとなる
(サッポロの発泡酒「北海道生搾り」はまだあったりするのだが)。

それにしても、第3のビールを開拓したのは当のサッポロだったはず。
それが「本拠地」でずっこけるとは。

発売前には当然国税など、各省庁へのリサーチや根回しも
しておくべきだったのに、それもできていなかったということになる。
なんとも、間抜けな話だ。

この損失を取り返すのに、サッポロは2年間我慢しなくてはならない。
でも、薄利多売の第3のビールで取り返すのは大変。

同社がもう一つ得意とするのは高価格帯。
といえば「ヱビスビール」だが、
これもサントリーの「プレモル」にすっかりお株を奪われている。

キリンに抜かれ、アサヒに抜かれ、
ワイン屋が本業のサントリーにも抜かれてしまい、
そのうち業界から消えるのでは…
とささやかれて幾星霜のサッポロビール。

それでも、「幾」つもの「星」のついたビールが、
グラスについた「霜」(というか水滴か)とともに
酔客達のおなかの中に消え、同社の経営はなんとか成り立っている。

そのビール腹、腫れた足の指をなんとかするべく生まれたのが
「極ZERO」だったのだが…とんだお荷物だった。

今夜は、「痛風」ならぬ「痛税」に苦しむ
サッポロビールに少しでも貢献すべく、
懐かしの「ドラフトワン」をいただいて寝ます。

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よそ者の「流儀」

紫波町の再開発プロジェクト「オガールプラザ」の
プロデュースに関わった、「投資銀行家」の「ぐっちーさん」。
ネット上ではよく名前も聞く人だが
(それなりにトラブルもあるようだがこれは有名税だろう)、
縁あって、岩手のこのプロジェクトに参画したようだ。

ブログで「オガールプロジェクト」の成功について語っている
この人口規模の街で、補助金も一切もらわず黒字を叩きだした、
どうですかお客さん、と。

ただ、そのあとの文面がいただけないものだった。

オガールに客を奪われた、と叫ぶ地元商店主達を「攻撃」しているのだ。
プロジェクト立ち上げ時に、協力してもらえなかったようなのだが、
そのために彼らを「抵抗勢力」と呼び、
「厚顔無恥」「怠慢」とこき下ろしている。

「オガールには客が来た。あんたらはどうだ、ざまあみろ」
と言わんばかりの(実際の文面はここまでではないが)痛罵。

確かに「ぐっちーさん」は成果を出したかもしれない。

協力してもらえず、政治的な「攻撃」もされたようだから
怒り心頭も理解はするが。

しかし、いきなり東京からやってきて、
客をごっそり持って行きながら「ざまあみろ」はないだろう。

だいたい、商店街の経営者たちは、
「過去の成功体験が忘れられず」、
高齢で頭も固いのが常、というのは
「ぐっちーさん」もご存じのはず。

相手は沈みゆく船で、黙っていれば死ぬ人たち。
ノウハウや知見を持っているのならば、
そういう人々こそ、救ってやってこその「成功」ではないのか。

その「ぐっちーさん」が「オガール」に誘致した、
「シアトル系カフェ」は、短期間であえなく閉店している。

値段が高い、という評判だった。
「東京流」「グローバル流」の成功法則が、
田舎でも絶対成功するわけではないのである。

「町をよくするのはよそ者、若者、ばか者」とはよく聞くが、
「郷に入らば郷に従え」という言葉もあるではないか。
「愚っ痴ーさん」ではイケマセン。

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タケダスポーツ

盛岡市に本社を置くスポーツ用品チェーン、タケダスポーツが
民事再生法を申請。負債54億円。(河北)

青森・岩手・秋田・山形の各県に店舗網を拡大、
一時は北海道にも進出していた。

当該地域に住んだことのある人なら、
「タケダスポーーーツ!」という雄叫びCMは、
聞いたこともあるだろう。

敗因はいくつかある。
まず大手資本との競争。

同じ東北地盤のゼビオや、
イオン系のスポーツオーソリティ。

一度岩手を撤退したアルペンも
先日、再び盛岡に進出するなど、
戦いは激化していた。

その中でタケダスポーツは、
店舗年齢の過ぎた、中規模な店舗が多かった。

「時代遅れ」。
古色蒼然としたロゴマークが
タケダスポーツの現状を反映していた。

一時はスキー用品で大きく売り上げを伸ばしたようだが、
御存知の通り、スキー人口は大きく減少。

危なくて面倒で金のかかるスキーに
若者はそっぽを向いて、
スマホの小さい画面でお金を使っている。

スキー華やかなりし頃はタケダスポーツも
釈由美子や眞鍋かをり、佐藤江梨子といった
売れっ子タレントを起用していた。

それが「りんご娘」という、
青森県限定のアイドルに変わった時、
タケダスポーツの退潮を感じた人も多かったことだろう。

同社の売り上げ減は、
東日本大震災も少なからず影響していたと思う。

全国資本のヴィクトリアを買収するなど
上手に会社を大きくしたゼビオが、
「同じ東北の企業のよしみ」で、支援するという。

同情される哀しさはあるし、
いつか看板が「XEBIO」に変わる懸念もある。
小規模な店舗を中心に、
店舗網の整理も必須であろう。

東北に明るい話題が続いた中で、
また少し、暗くなるような話であった。

倒産といっても破産ではなく民事再生なので、
タケダスポーツは変わらず営業中である。
明日、行ってみようかな。

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コーヒー

新聞各紙に1面のデカデカティーザー広告を掲載したネスレ日本は、
28日に「インスタントコーヒー」という名称の使用をやめ
「レギュラーソリュブルコーヒー」に変更すると発表した。(毎日

「ソリュブル」はSoluble、「溶けやすい」という意味。
それに「レギュラー」を冠することで、
レギュラーコーヒーに近づいた、というイメージを持たせる狙いがあるようだ。

そもそも日本人が普及に寄与したこともあり、
「インスタントコーヒー」は和製英語と思っていたが、
Wikipediaには「Instant Coffee」で掲載されている。
「Instant」だけでもインスタントコーヒーの意味があるという。

「レギュラーソリュブルコーヒー、なんて名前は定着しない」と
"E電"扱いする人が多いようだ。

まあおそらく一般に定着するとはネスレも思っていないだろう。
長すぎるし、「ソリュブル」という聞き覚えのない、
かつ日本人には発音しにくい単語では、呼んでもらえない。

ただ、当のネスレも近年「インスタントコーヒー」とは
ほとんど名乗っていなかったはず。

今後ネスレ日本として、品質表示、
カテゴリー名として「レギュラーソリュブルコーヒー」と命名する、
ということなのだろう。
インスタントコーヒーと呼びたければどうぞ…という姿勢だと思う。

「インスタント」、"即席"の味ではなく、
よりレギュラーコーヒー、ドリップコーヒーに近い味を
再現してみせているぞ、という気概の現れなのだろう。

確かにインスタント…いやいやレギュラーソリュブルコーヒーの風味は向上している。
「香味焙煎」なんかはかなりいいところまで行っていると思う。
安物のレギュラーコーヒーよりも、よっぽど香りが良い。

確かに、レギュラーとソリュブルでは味が違うのだけれど、
"嗜好品"としてのコーヒーとしては、
同じ土俵に立っている。

Solubleは「Solution」と語源は同じ。
「溶ける」のほかに「解決できる」という意味もある。

「即席」から脱却するという問題を無事、
Solubleできるだろうか。

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ハード&ソフト

ファミリーコンピュータで世界的な覇権を握り、
栄華を放った任天堂の凋落が止まらない。
売上は精彩を欠き、内部留保は潤沢とはいえ、
それを食いつぶしているような状況。

ゲームの主戦場は完全にスマートフォンに移っており、
任天堂に代表される、ハードとソフトを抱き合わせる商法は
通用しなくなってきている。

同じハードメーカーとはいえ、スマートフォン寄りの商売もしている
ソニーやマイクロソフトと異なり、
現在の任天堂のビジネスモデルは、
スマートフォンを喰わないと喰っていけない、という、
そりゃ無理だろ、的なポジションにある。

任天堂も、ハードをソフトランディングさせ、
ソフトに舵を切るほうが収益力は確保できるのだろうが、
それでは他のソフトメーカーと同じ土俵に立つだけになる。

ハードとソフト、という話で思い出すのは、
「写研」という会社である。

写真植字(写植)という、いわゆる「活字」を進歩させた、
文字印刷技術のトップメーカーだった。

「だった」というのは、今や見る影もない弱小企業に成り下がったからである。

写植は、文字を版下に印字するハードウェアと、
書体(今で言うフォント)を搭載した「文字盤」という
いわばソフトウェアの、抱き合わせで成り立っていた。

写研は日本における写真植字の草分けで、
名実ともにトップメーカーとして君臨。

東京に地盤を置く写研のライバルだったのが大阪の「モリサワ」。
もとは同じ製薬会社に勤めていた両社の創業者が、
写真植字装置を共同開発したのだが、
わけあって東京と大阪に袂を分かちしのぎを削った。

ライバルと言っても、地元の大阪でモリサワが健闘していた程度で
全国的シェアでは写研の一人勝ちだった。

それが崩れたのは、パソコン(当時はMac)による製版の広まり。
写研は、パソコンを使わないハードウェアの販売にこだわったが
モリサワは文字盤をデータ化=ソフトウェア化し、
Macで使えるようにした。

自社ハードの販売を犠牲にしたのだが、
それが奏功することになった。

パソコンはあっという間に普及し、
モリサワのフォントが支持を集める一方、
パソコン上で使えない写研のシステムは嫌われ、
徐々にシェアを落としていく。

誰の目にも、写研の書体とモリサワの書体では美しさが違っていたが
Macで操作できるモリサワ製品の便利さにはかなわなかった。

これが20年ほど前の話。

モリサワはいまやフォント業界トップシェア。
新聞広告などはほぼ100%モリサワの書体が使われていると言っていい。

それに引き替え、写研は創業者の娘である女社長が
自社ハードウェアに拘泥した結果、凋落。
10年ほど前には粉飾決算も発覚している。

いまは大塚でひっそりと営業を続ける。
2年前にようやく書体のデータ化を発表したものの
その後音沙汰はない。「勝負あった」、である。
(なお写研は未だに自社ホームページすら持っていない)

話をゲームに戻して。
最大のライバルだったセガは、すでにハードを見切って
ソフトに注力している。

ただしセガはパチスロメーカー・サミーの傘下に入ってしまった。
ナムコもバンダイと経営統合、
同じ玩具メーカーではタカラとトミーも合併。

任天堂も、一介の花札屋からここまでのしあがってきた自負はあろうが、
いつまでも独立独歩、というわけにはいかないかもしれない。

「任天堂」という社名は「天に任す」という意味があるという。
お天道様は晴れたり曇ったりを繰り返す。ときには嵐も呼び起こす。
天に棹さすか身を委ねるか。

倒れるなら前のめり…なんて格好いいことは言っていられない、
従業員5000人は、そうそう運を天に任せられないのだから。

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参院選で勝ったのは池上彰

選挙開票速報特番。
もはやテレビ東京の「池上彰」は定番となってきている。

先日の参院選でも、テレビ東京の特別番組の視聴率は、
NHKに次いで2位。
民放では視聴率トップである。

テレビ東京が1位を取るのは、よほどのことである。
その「よほど」を、池上は起こしているのだ。

なんといっても池上の解説は「わかりやすい」そして「おもしろい」。

この候補は誰が支援しているのか、を、模型を使って解説する。
コメンテーターは無知そうな芸能人ばかり(これは池上が得意とする演出だ)。

池上はやたらに知識をひけらかさず、VTR明けにインテリジェンスを小出しにするが、
小出しだから嫌味がない。

そして、候補を揶揄する。
候補を紹介する時の「ミニミニ情報」を「小ネタ」のようにさしはさみ、
さらに「創価学会ネタ」。公明党候補を紹介する時は、お約束のように
「公明党=創価学会」に触れてくる。

「政教分離」主義にどう見ても矛盾する公明党の存在を池上は番組で突き、
候補にそのことを問うていく。

公明党候補を紹介する時の「来たぞ来たぞ」感は、視聴者をワクワクさせる。
そう、イチローが打席に立ったときのような…。

この「創価学会」に触れるという「タブー」を破ってまで、
「わかりやすさ」を追究するのが池上流。

この「わかりやすさ」「おもしろさ」が、
池上の特番が支持される理由なのだ。

いっぽう、他局の開票特番はどれもこれも似たり寄ったりで、
しかも「わかりにくい」「おもしろくない」。

「平日ニュースの看板キャスターを起用しなければならない」という不文律に陥り、
古舘伊知郎、安藤優子、村尾信尚といった代わり映えしない面々。NHKも武田真一アナだった。

TBSに至っては膳場貴子ではもたないと判断し関口宏を担ぎ上げたが、結果は…。
まあ、参議院議場から番組を進めるという手法には、
さすが赤坂の局だ、と膝を叩いたけれど。

テレ東は看板キャスターがいなかった。
以前は、しかたなく「WBS」の小谷真生子を起用していたが、
WBSは経済番組。小谷では独自色が出せるはずもなかった。

民放で人気を博していた池上に、
白羽の矢を立てられるのはテレビ東京しかなかった。

そもそもテレビ東京は、日本経済新聞の協力があるとはいえ、
系列局が5社しかなく、全国の状況を20社以上の系列局から仕入れられる他局とは事情が異なり、
「全国から膨大なデータを集めて分析し速報する」ことができない。

そのため、「ショーアップ」した「わかりやすい」「おもしろい」
開票速報番組の立ち上げに踏み切ることができたのだ。

ただ、そもそもこの「わかりやすい」「おもしろい」開票特番は、
久米宏の「選挙ステーション」が先鞭をつけていたはず
(当時、岩手に系列局がなかったので詳しくは知らないが)。

取材対象を揶揄するという手法は「ニュースステーション」が得意としていた。
模型だって、Nステのほか、今では「サンデーモーニング」が自家薬籠中。

しかしテレ朝もTBSも、型にはまった特番しかできなくなった。

選挙特番はそもそも、開票状況が逐一更新され、状況が刻々と変わる、
という「スポーツ中継」的面白さがあったはず。

しかしいまや20時の投票終了で各局議席獲得予想数値を出すようになり、
しかもその精度は似たり寄ったり。
当確だって、以前は「当確ミスで謝罪」というニュースが翌日によく流れてきたが
ミスを恐れ、当確で冒険もしなくなった。
つまりどの局を見ても、開票速報は金太郎飴のように同じなのだ。

地方局のローカル速報ならなおさらで、ショーアップする技術も度胸も持っていないから、
平日夕方のローカルニュース番組の看板キャスターが淡々とデータを読み上げ、
当確が出れば延々とその候補の事務所からの中継をだらだら続け、全国の情勢は全く分からなくなる。

それに比べると池上彰の開票速報の、なんと面白いことか。

他局も、そろそろ決まりきった構成の特番は、見直すべき時に来ているのではないだろうか。
特にくやしいのは、池上を発掘したテレビ朝日、そしてOBによって追いつかれたNHKだろう。

まあNHKに、ショーアップした速報番組は誰も求めていないだろうが、
民放については、看板キャスターでなくてもいいはずなのだ。
申し訳ないが、たとえば安藤優子が出ているから速報を見たいと思う人はあまりいないだろう。

そういう意味では、先述の関口宏の起用はいい例かもしれない。
参院議場での生放送というのも意表をついていてよかったと思う。

他の4局は「打倒池上!」で、もっとぶっ飛んだ内容でやったっていいのではないか
(ふざけたり笑いを取りにいったりしなくてもいいけれど)。
確かフジテレビも80年代のイケイケ時代にはそのような手法でやっていたはず。
しかも他の4系列は、テレ東系列にはない組織力・機動力があるのだし。

これは地方局や独立局にも言える。さきほども言ったが「淡々」「ダラダラ」とした
ローカル開票速報も見直すべきだろう。

なんにしても、池上彰はいろいろな「課題」を、政治家だけでなく
テレビ局にも突きつけたように思う。

今度の参院選で勝ったのは自民党でも公明党でもなく「池上彰」その人ではないか。

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愛のないユニクロ

ブラック企業批判に対し、「ユニクロ」の
ファーストリテイリングCEO・柳井正会長が、
朝日新聞のインタビューという形で反論している。

なんというか、
「身もふたもない人」なんだろうな、と率直に思った。
身もふたもないからこそ、あそこまで成功するのかもしれないが。

新聞社によって編集されているので、
完全に柳井氏の見解を表現しているわけではないと思うが、
それにしても、「ブラック企業批判」でも
自信は一切揺らいでいない、という感じだ。

誤りを認めたのは「グローバル化を進めるのが速すぎた」という
軽微な一点のみ。
あとは自分の見解を、改めて強調している。

確かに、グローバル化はいまさら否定できないし、
甘えていては競争に勝てないことに至っては、
神代の昔から言われていること。

そんなわかり切ったことを、柳井氏はただ言っているだけ…
なのかもしれない。

ただ。
それにしては、柳井氏には「愛」がない。

"Glow or Die"、「成長か死か」なんだ、と柳井氏は言い、
「世界同一給与体系」構想をブチあげて見せた。

働かない奴は、貧しい国の水準の給料しかやらない。
その代わり、デキる奴にはとんでもない俸給をやろうじゃないか、どの国の人でも…
というのが、この構想である。

なるほど、愛がない。
要するに「できない奴は死ねばいい」と言っているに等しいのである。

「我がファーストリテイリングには、第二の柳井正、
そして柳井正を超える者だけが集まれ」。
これが柳井氏の理想なのだろう。

逆に、それについていけない者は去れ。
去れというより「わが社には要らない」。

わが社=理想社会、とするならば。
「この世に要らない」=「死ねばいい」と言っているようなものであろう。

そうやって異常に研ぎ澄まされた人間だけを、
世界からかき集めて、柳井氏は何をしようとしているのか。
もはやSF映画の世界である。

何も「みんなで助け合いましょうよ」「できない人、かわいそうだねー」
などと言いたいのではない。
この世が競争社会なのを否定はしない。

否定しないが、柳井氏はあまりにも身もふたもなさすぎる。
国境を飛び越えようとして、
柳井氏は倫理の境界線すら忘れかかっているのではないか。

「できない人」は一定数発生する。
というか「できない人」がいるから「できる人」も生まれる。
それはごく少数なはずだが。

しかし柳井氏は、その「できる人」だけを集めて、
成長を継続させようとしている。
「成長できなければ死」と言っているのだから。

「できない人には死を与える」ことで、成長しようとしているのだ。

そんな経営者の運営する店舗に、魅力があるか。

きょう、ファーストリテイリングの第2の業態「GU」の
新店舗に行ってみた。

平日の午後、若いお客さんであふれかえっていたが、
魅力ある商品はなかったように思う。

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ピースフル・ブラック

「ユニクロはブラック企業」説が話題になっている。(アゴラ

年端もいかぬ若者を店長に祭り上げ、サービス残業漬けにする…。
それについていけるものはほんの一握りだ、と。

まあ、だからこそユニクロは成長するわけで、
当たり前と言えば当たり前、
自分が入りたい企業が「ブラック」なのかどうか、
入る前に見極めるべき、と島田裕巳は言う。

池田信夫なんか「何がブラック企業だ、
俺なんかNHK時代は働きに働いたワイ」と、
切って捨てている(アゴラ)。

ユニクロ(ファーストリテイリング)創業者の
柳井正は世界第66位の大富豪と認定された。

おっと、ユニクロは社内公用語が英語なので
「大富豪の柳井さん」なんて言っちゃいけない。
「ミスター・ミリオネーア・ミスター・ヤナーイ」と呼ばないとね。

同じ英語仲間の三木谷浩史氏や、
ワタミの渡辺美樹氏など、「カリスマ経営者」と
称される人々は、ラクしてのしあがったわけじゃない。
血のにじむような努力を経て、今の地位についているのである
(まあ、運も必要だけどね)。

そうなれば、部下に求めるハードルも、
上がってくるのは当然のこと。
それについていくどころか、
追い越して行くような人間が、
明日のミスター・ヤナーイになれるのだ。

かつての日本の栄光は、
戦後を経て、日本を一流国にするんだ!
という気概を持った経営者たち、
(たとえば松下幸之助とか)が作り上げたもの。

その時代、ブラック企業なんて言葉は当然生まれてないし、
生まれることもなかっただろう。
企業に使い捨てられる若者たちは同様にいたとは思うが、
そんな余裕はなかったのだ、
なんたって「戦争」を経験してるんだから。

努力しても報われぬ人間が生まれないようにしよう、
なんて、性善説や前近代的社会主義みたいな発想が
生まれるようになったのも、日本が平和になったからこそ。

一流経営者になるような人間は
入った会社をブラックだ、極悪だ、となじる前に
オリャーとなんでもこなしちゃうもんです。

世界の富豪ランキングに日本人が少ない、と
嘆いている方、ブラック企業を日本に増やそう、
と言ってるのと同じことですよ。

そういう才能のない人は、
ホワイト企業を求めてさまようしかない。
私も似たようなもんです。

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7パーセントの理由

盛岡駅の駅ビルに立ち寄る。
名は伏せるが、某店の店先に小さな張り紙。

「なるべく現金でお願いします」。

なんだろう、と思っていたら、
横に小さい字で
「クレジットカードでは、店側が6~7%負担しないといけません」。

最初、これを見たときに、違和感というか、
消費者としては怒りにも近いものを感じた。

支払い方くらい、消費者の好きにさせてくれよ。
それにこの駅ビル自体、ハウスカードがあって
「クレジットカード使ってね」って、自分で言ってるじゃないか。

「クレジットカードを使って」と言っておきながら、
片方では「使うな」って、
おかしいだろ。

…しかし。
「負担金6~7%」って。
よく通販サイトなんかで、「商品代金到着時に、
業者にクレジット払いできます」
なんどと書いてあるが、よく見ると「手数料は商品代金の7%」などとある。
3000円買ったら手数料210円。
ウーン、結構高いな。

この店にしてみると、
売り上げが300万円、全部クレジットカードだったとすると、
21万円が信販会社に取られてしまうことになるのだろう。
ウーン、結構でかいぞ。

自分のところで「クレジットカード使ってね」と
言っているにもかかわらず…と言ったが、
それはこの「駅ビルの運営会社」が言っていることで、
テナントは好む好まざるに関わらず、
カードOKと謳わざるを得ないのだろう。

この駅ビルには、大手アパレルチェーンや大手ドラッグストアの店舗も入っているが、
大手ならばクレジット払いされても、
7%の手数料は体力でなんとか我慢できるだろう。

しかしこの張り紙をしていたのは、
どう見てもこぢんまりとした小規模経営の店だ。
7%は痛いだろう。

そう思うと、先ほど感じた怒りも収まろうというものだ。

ここ数年、あらゆる支払いはなるべくクレジットカードにしている。
ポイントがつくからだ。
しかし、一括払いでも消費者には手数料が一切かからないのに、
なぜポイントが入ってくるのだろう、とふしぎには思っていたが、
実はそのポイントの分は、店が負担していたのだ。

これからは、現金も見直さないとね…と、
薄くなった財布を見て思い直した次第である。

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土に還っていいのか

パナソニックのボタン電池を買った。

ボタン電池なら、100円ショップでも売っているが、
急いでいたのでホームセンターで買った。

298円なり。100均の約3倍。パナソニックは高い…。

あとでヤマダ電機に行ったら230円だったので、
損した気持ちでいっぱいになったが。
それにしたって、100円ショップの倍以上だ。

パナソニックのボタン電池は、
プラスチックのパッケージに入っている。
「土に還る」プラスチックなのだそうな。

100円ショップで売られているものは、
三菱電機などメーカー品もあるが、
大体はノーメーカーで、ダイソーなら
ダイソーの社名が書かれている中国製がほとんど。

パッケージも、プラスチックのカバーを紙で挟んでいたり、
プラスチックの袋に入っている。
土に還るなんてものであるはずもない。

何を言いたいかというと、
これじゃパナソニックも赤字になるだろう、
ということだ。

土に還るプラスチックのパッケージを求めている消費者なんて、
そう多くはないのに、
パナソニック製品はそこにコストをかけてしまう。

商品価格にもそれが上乗せされていく。
開発費、材料費、特許のライセンス料などなど…。
そりゃ、2倍にも3倍にもなりますよ。

もちろん、それでも買うのは、
「パナソニック製品」という「安心」を買うのであり、
土に還るパッケージはあくまで「おまけ」なのだが。

ただ、「別に一流メーカーでなくても、安くてもそこそこ使える」もので
じゅうぶん対抗できる、というところを突かれ、
LGやサムスンにおいしいところをもっていかれたのが
パナソニックであり、シャープであり、ソニーなのだ。

いまや欧米では、完全に韓国勢に市場を奪われてしまっている。
むしろ、パナソニックが二流メーカーにすら見え、
ブランド力も地に墜ちた感がある。

死後、社名から名前を奪われた松下幸之助は、
自分の名を外されてから坂道を転がり落ちていく「松下電器」を、
どう思っているのだろう。

まさか、松下の理念も、これまで築き上げた栄光も、
土に還そうとしているのではあるまいな。

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