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2014年3月

21世紀の落語入門

小谷野敦・著、幻冬舎刊。

広瀬和生「落語評論はなぜ役に立たないのか」を読んで
胸くそ悪くなった方にはぜひ読んでもらいたい。

この広瀬本への批判も含まれているが、
「生の落語を聴かない奴は落語を語る資格なし」と言いたげな
昨今の落語ブームに警鐘を鳴らす、そんな本だ。

広瀬や堀井憲一郎のように、
毎日なんらかの落語会に出向いては評論文をしたためているような
「落語ホリック評論家」は信用するな、と説く。

初心者が聴くなら、「過去の名人の録音でもいい」とし、
生の高座は見られる環境にあれば見ればいい、程度。
我々のような地方在住者は快哉を叫びたくなる。

また、「誰それは名人」という「通説」を信用しなくてもいい、と説く。
たとえば、著者は「志ん生はよくわからない」と断じる。

これはよくわかる。確かに、みな名人だ、名人だ、と言うけれど
音源を聞いてもおじいさんがムニャムニャしゃべっているだけにしか聞こえない。

こういうと「お前は素人だな」と笑うのが落語ファンだったりするのだが、
著者はそこにくさびを打ち込んでいるのだ。

ただ、痛快なのは序盤だけで、中盤以降はやや読みにくくなる。

博覧強記な著者は、落語同様に好むという歌舞伎や、
クラシック音楽、ヨーロッパ文学などでたとえ話をするのだが、
これが門外漢にはチンプンカンプン。

あと、落語に限らず「◯◯は傑作だ」「◯◯はくだらない」と言った、
著者の個人的趣味に基づいた断定的記述も多く
(ほぼ誹謗中傷レベルの危なっかしい部分もある)、
くしくもこういう部分は広瀬本に通底する。
まあ、「毒をもって毒を制する」とでもいおうか。

小難しくて意味不明な文、
趣味を押しつける毒々しい文…これらの中に、
スカッとする部分が出てくるから、
よけいにスカッとする。
そんな本である。

寄席もそうだ。著者も言うが、
面白い落語家もいるし、つまらない落語家もいる。
だから、寄席は面白い。
…おっと、寄席礼賛をしてしまったではないか。

この本は「スカッとするための本」ではなく
「21世紀の落語ファンへ贈る入門書」のはずなのだが、
後者としては、やや心もとない…のは、ご愛敬かな。

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「よろしければ」は、よろしくない

小売店なんかでよく聞く、
「よろしければこれなんかいかがですか」
「よろしかったら試着してみて下さい」。

これ聞くと、すごく嫌悪感を覚える。
イヤだなぁ、と。

だいたい「よろしかったら」って言うけど、
よろしくないシチュエーションが多い。

小売店で、品定めをしているのに、
横からぬっと入ってくる店員。
あんまり店員とコミュニケーションしたくないんだけどなぁ。

こないだもあった。とある店。
ほしいスニーカーがあって、眺めていたが
案の定店員が横から「ぬっ」と出てきて
「スニーカーですか?」。

ゴルフ場の定番のあいさつ
「今日はゴルフですか」かよ、と思った。
ゴルフ場に和太鼓の練習やりに来るバカがいるかよ。

こういうときは「あ、いいっす」とそっと売り場を離れることにしている。
ほんとはそっとしておいてほしいんだけどさ。

「いや、見てるだけなんで」とか言っても、
くっついてくっちゃべってくる店員とかいるし。

実際、店員が客に「ロックオン」して接客する売り方は
前近代的な考え方で、
客を遠ざけるアクション」と言う言い方で切って捨てる専門家もいる。

なのになぜ、店員はこういう「過剰接客」をやめないのか。
それはこういう「May I Help You?」の売り方で
売れていたからだ。

もののない時代、店のない時代は、
客にサービスすることで、客も喜んだのだ。

しかしいまは違う。
モノも店もあふれた時代。
客も品を見る目を養ってきている。

だが、店側は未だに「店員はコンシェルジュであるべき」
と、店員に教育している。
だからこういう接客をしてしまうのだ。

実際は、店員側だってこういう接客はされたくないはずだ。

しかし客の中には、
店員との会話を拒まない客もいれば、
押しが弱くて、店員の言うがままに買ってしまう客もいて、
こういう接客が一定の成果をあげてしまう。

でもそろそろ化けの皮がはがれてくるんじゃないだろうか?
ネットでも買える時代なんだし。

…ただ、世の中のものすべてがネットで買えるわけじゃない。
買えない品物の事例。
これは盛岡市内。

喫茶店みたいなお店。
店先のショーケースの中においしそうなケーキが並んでいる。
あぁ、いいな、とぼんやり眺めていると、
店の奥から店員が「よろしければこちらもどうぞー!」と声をかけてきた。
出た、「よろしければ」。

しかも店員がいるのは店の中。
そう、売り物が店の中央にも置いてある、というのだ。
ガッツリ店の中央である。
入ったら二度と買わずに出られない感じ。

その手前のショーケースだけじゃ許しませんよ、
みたいな雰囲気出まくりなのである。

その店員の声がけに不穏なものを感じ、
さっと立ち去ったのだった。

っていうか、売り物を喫茶店形式の店の内部に置くなよ、
という話なのだが。
そういうのも、分からないのかねぇ。

「よろしければ」は、
たいがい「よろしくない」というお話でした。

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損して得とれ

駅ビルでお菓子を買った。

きれいな化粧箱に入っているものを買おうとしたところ、
売り場のお姉さんから、
ビニール袋入りのお徳用もあります、
とすすめられた。

確かに、ショーケースの片隅に、
ビニール袋に入った商品が置いてあった。

中身は同じ数入っているが、
化粧箱がないので、値段は当然安い。
自家用だったので、
それにして下さい、と言った。

そうなると結構安価な買い物になる。
なんか物足りなくなって、
横にあるバラ売りの品物も一緒に買ってしまった。
逆に多く買うことに…
しかし、損した気持ちにはならないわけで。

店側としてはまさに「損して得とれ」。
お徳用をラインナップすることで、
ついで買いを誘発する。

で、その作戦にしてやられたわけだが…
ポンと膝をたたきながら
そのお菓子をいただくのでありました。

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