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人生、成り行き~天才落語家立川談志~

稀代の落語家・立川談志の半生を描いたドラマが、
NHKBSプレミアムにて8月11日に前編、18日に後編が放送された。

松岡克由少年が16歳で柳家小さんの門をたたき、
75歳で死ぬまでを描き、
それぞれの年代に応じて3人の俳優が演じた。

前編「青春」では、談志役を小出恵介が務めた。
前座・二つ目時代から、沖縄で啖呵を切った40歳まで
若くて生意気で鼻っ柱の強い男を表現した。

「らくだ」「蜘蛛駕籠」など、
稽古シーンや高座シーンも器用に演じてみせた。

前編の前半で、やや説明的描写がクドい感があったが、
小出の熱演は、それを帳消しにした。

いっぽう後編「家元」では、中山秀征が演じた。
これが一番話題になったもとだろう。
遺族が中山のキャスティングを希望したというのだが…

一般的には「芸がない」「事務所の力で売れた」イメージの強い「ヒデちゃん」だが、
このドラマでは、「変人」立川談志を体当たりで見事に演じきっている。

中山のトレードマークであるガラガラ声も、
晩年の談志にぴったりと合っていた。

そして、前編・後編通じて断続的に挿入される、
口もきけなくなった最晩年の寂しい姿を、
舞踏家の田中泯が好演した。

最晩年のシーンではセットを意図的に最低限にし、
ホリゾント(スタジオの壁)をむき出しにして、
文字を映写する、舞台のような演出が試みられた。

また、それぞれの年代において、
ターニングポイントとなるシーンでは、
立川談志という「名跡」そのものが談志本人に語り掛ける、
という演出が行われた。

この「名跡」役=ナレーションは、弟子の立川談春。
談志を愛してやまぬ弟子の談春が、ドラマとはいえ
談志を冷静に批評するおかしさがあった。

志の輔、志らくなどの有力弟子へのインタビューも挿入され、
弟子たちが立川談志を、文字通り「語りつくした」。

このドラマでは、
談志を語るのに重要なエピソードも大体網羅していた。

「師匠・小さんに、はむかいながらもキャッキャとおどけ合う」
「賞味期限のとっくに過ぎた食い物を弟子に”贈呈”する」
「クマのぬいぐるみをかわいがり続けた」など…。

当然、「落語協会脱退事件」も描く。
もう少し掘り下げてもよかったかな、
と思うがそれは贅沢な話か。

脇を務める俳優陣もなかなかのもので、
家族役の大谷直子や坂井真紀も存在感があったが、
驚くべきは柳家小さん役の柳亭市馬だった。

談志と親しい弟弟子ではあったが、
そうは言っても今や落語協会の副会長である。
禍根を引きずる中での出演は勇気が要ったかもしれない。

立川流一門の落語家も出演。
ネットでもおなじみ、「万年前座」の立川キウイは
実際と同じく弟子のひとりを演じた。
セリフなしだが、ひときわクサい演技で、
別な意味での存在感を漂わせていた。

また、談志生涯のライバル・古今亭志ん朝役にマギー、
のちに目覚ましい活躍をすることになる弟子・志らく役に森岡龍。
「あまちゃん」ファンは「おっ」と思ったのではなかろうか
(なお若き日の志ん朝役の太賀も「あまちゃん」に出演している)。

見ごたえたっぷりの計2時間であった。

…立川談志とは何者だったのか。
この番組では「生涯、落語を愛し続けた男」という答えを出した。

一時期スタンダップコメディアンになったのも、
参議院議員になったのも、「笑点」を立ち上げたのも、
すべては落語のためだった。
落語の衰退を憂い、注目を集めるためのこと。

どう見ても意味不明な行動を起こしたり、
過去と矛盾する言動を繰り返したり…
それも、談志本人は「矛盾のない人間はいない」と片付ける。

後半、談志が新潟で「談志米」の収穫を行い、
手伝ってくれた農家のおばちゃんを
「ああいう仕事をしている人のもうけと、
株とかでのもうけは違うね」と評価する実際の映像が流れた。

自らは「上納金」で弟子から金を搾取しておきながら何を言うか…と
思わず笑ってしまったのだが、
それもまた「立川談志」なのだ。

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