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若干の余裕

落語協会が、YOUTUBE上に
「林家こん平」の動画を掲載した。
「芸人紹介」という、落語家や色物芸人のPR動画の一環である。

こん平といえば言わずと知れた「笑点」の大喜利中核メンバーだった。
「チャンラーン」「新潟県チャーザー村」
「私の帰りのかばんには、まだ若干の余裕が…」
などの「名ゼリフ」でお茶の間をにぎわしていた。

林家三平門下の「古株」。
若いころから陽気なキャラクターで、
CMなどでも人気を博した。
「らくご卓球クラブ」の立ち上げ人としても有名である。

しかし10年ほど前に病に倒れ、
「笑点」を降板。弟子の林家たい平にその座を譲った。

視聴者を安心させるためか「一時休養」という形となっているが
実際には復帰のめどが立たないままとなっていた。

これ以降、高座をはじめ、公の場に出ることもなくなり、
一時は卓球をする姿などをメディアに見せることもあったが
近年はそれもなかった。

「卓球くらぶ」の主要メンバーである三遊亭小遊三(落語芸術協会)が
こん平さんは元気でやっています、と
言葉だけでは言うのだが、
肝心の「本人の姿」が見えず、
なんとなく「そういう状態なのか」と思っていた。

そこへきてのこの映像である。
休養中、少しずつ漏れ伝わっていた本人の映像はいくつか見ていたが、
ずいぶんと老け込んでしまったな、というのが率直な印象である。

浅黒くつやつやとしていた顔は白くなり、
頭髪も抜けてはげあがっている。

そして本人は口を開かない。
原稿を読み上げる女性の声が聞こえるだけで、
こん平は眉間にしわを寄せたまま、
泣いているような表情を続ける。

「父」という言葉を発するその女性、
「はやし咲」というテロップから、調べたところ
こん平の次女で、司会者をしているとの情報がわかった。

司会者というだけあって立て板に水なのだが、
なんだか「心」は伝わってこない。
こん平はホロホロと涙にくれるだけ。

さらにこん平の著書の宣伝までこなし、
娘は「こん平さん」となぜか「さん」付けで呼びかけると、
こん平は「笑点」でおなじみの「チャンラーン」の口上をやるのだが、
その声はあまりにも変わり果てていて、
聞いていて唖然とする。

おそらくもう高座に帰ることはないんだろうな、
という印象を抱かせる、
嗄れに嗄れきった声である。

シンボルだった「チャンラーン」も、
左腕が明らかに上がっていない。

なんとも、やりきれない、というか、
がっかりさせられる映像である。

本人や協会側としては「元気」「健在」であることを
示そうとしているのだろうが、
「落語家・林家こん平」はもう戻ってこないのだ、
というイメージはかえって確固たるものになってしまった。

そりゃ人間は老いていくものだから、
致し方ない面もあるとは思うが、
こん平は「元気」が売りだっただけに、
その落差が大きいとショックも大きい。

「私はまだ落語家です」「笑点には必ず戻ります」と、
その状態で言い張ることが、本当にファンを喜ばせるのか。

まずは本人の言葉、本人の映像で
アピールしたい、という「思い」があるのだろうが、
それがますます、
「何とも言えない感じ」を抱かせるのだ。

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