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ラジオの航海

民放連加盟ラジオ局が、全社でのデジタル放送化を断念。(朝日

テレビの地デジ化で空いたVHF帯での展開を目指したが、
業界あわせて1200億円にも及ぶ投資はとうていできない、と
判断する局が多かったようだ。
もとよりラジオの広告市場はしぼんでおり、
デジタル化による果実も得られない、と考えたのだろう。

ユーザー側にとっても、買い換えを余儀なくされる。
テレビと比べればその額は高くもないだろうが、
デジタル化されることで当然受信機の価格は上がるわけだし、
それ以前に、これまで生産されてきたラジオ受信機が
すべて「ムダ」になることの影響は、
テレビの比ではない。

デジタル化されることで、アナログ放送しか受信できないラジオが、
全部ゴミになるのだ。

一番大きいのは「防災」である。
いざとなれば、単3電池1個で動くラジオでも、すぐ受信できる…
これがラジオの特性なのに、
「デジタル化したら、防災袋に入れておいたラジオで聴けなくなった」、
では済まされない。

放送形式が変わって受信機が使い物にならなくなる、
というのはテレビでも同じ事が起こったが、
これは「エコポイント」という「まやかし」(笑)でなんとかなった。
しかし、もう同じ手は使えない。

ラジオ業界ではデジタル化への足並みがそろわず、
東京FMのようにV-lowデジタル放送に熱心なところもあるが
(もう音質に気を配ることもないから比較的余裕がある)、
AMは「受信効率を上げる方が先だ」と考えるほうが先だった。

AMキー局の1社であるニッポン放送は、デジタル化ではなく
「FM放送参入」を真っ先に検討課題として挙げ、
デジタル放送を蹴った。

AMにとって悩みの種は「受信障害」。
AM放送の電波は「打たれ弱い」。
都市部でどんどんビルが増え、電子機器も増加、
ノイズが避けられないようになり、
ユーザの減少は死活問題である。(朝日

上記記事で解説する朝日の記者が一つだけ思い違いしているのは
「震災時、東北地方は受信状態が良いからラジオが見直された」という点。

岩手も受信状態が悪い。とくに民放(AM・FM1社ずつしかないが)。
都市部が「ビル」で電波が遮られるのと同じように、
岩手のラジオ電波は「山」で遮られる。

放送局側は、中継所をたくさん作ることで対応しなければならないが、
「全県あまねく」を求められるNHKと違い、
効率重視の民放ラジオは過疎部対策が後手に回っていて、
震災時にも、被災地のうち、相当の地域
(被害のあった沿岸部はまさに過疎部である)では
聴取できなかったと思われる。

その証左に、民放AM局が、被災地・山田町で震災後に「あわてて」
FMでの臨時中継局を設置し、対応している。
結局この臨時中継局は断続的に免許を更新し続け、現在も電波を出している。

最初から中継局を作っておけばよかったのだが、
都市部での中継局設置を優先したためにこういうことになったのだ。

そのラジオ局が「被災地にラジオがあった」「我が局の電波が役立った」
なる書籍を上梓したというから、笑止千万である。
まあ確かに、中継局のある都市部では役立ったのだろうが…。

東京のラジオ局も「電波障害」が悩みの種で、
それを、まさにFMで解決しようとしている。

FM化は、デジタル化と比べれば投資も少なくて済むはずだ。
あとは役所がウンというかどうかである。
デジタル化は二の次になるのも無理はない。

仮に、NHK含めAM局がすべてFM局に完全移行してしまうと、
今度はAMラジオがゴミにならないか、という懸念は生じるが、
デジタル化と比べれば、ユーザへの負担は少ないだろう。
おそらく「最小限」のAM電波は、短波放送のように生き残るだろうし。

上記記事は「最後の護送船団が変わるなら
デジタル化議論も無駄にはならない」と結ぶ。

自らも放送局を庇護する立場の朝日新聞社が、
放送局を「最後の護送船団」と喝破するのはおかしな気もする。

新聞社も、土地の所有権を国と交渉したり、税金の対象外にしろと主張したり、
護送船団以外の何者か、という気もするし。

ラジオ業界はそれなりに必死なことは、
大なり小なり、一般人にも伝わってきている。
デジタル放送化は、ちょっと理想が高すぎたのかもしれない。

ただ、デジタル化にはメリットも考えられなくもない。

以前触れた「番組の途中ですが…」などは良い例で、
音声を多重化することで、
録音装置ではニュース速報や気象情報の類をカットして録音できる、
などのメリットが実現するはずである。

ただこれも、現状のFM放送でも、信号送出などで実現可能であるはずだ。
(受信機が対応しないといけないが)

テレビのデジタル放送化でいろいろな「つまづき」が見えたはず。
それを、メディアの先輩であるラジオはよ~く分かっているだろう。
ブンヤさんからは「護送船団」と笑われているが、
ラジオ業界自体は必死にもがいているのは伝わっている。

激しく揺れる「電気の波」(=電波)を進む苦難の航海。
その行方を皆、固唾を呑んで見守っている。
ラジオはいらないものではない。

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