« 都会のお約束 | トップページ | さようなら、クボタ民謡お国めぐり »

キャンパス寄席に落語は要るのか

NHKラジオ「真打ち競演」は今春から月末の放送が、
キャンパス寄席」に置き換わっている。

普段落語の公演もやらないような、片田舎の市民ホールを巡回し、
客はほとんど高齢者の「真打ち競演」と違い、
「キャンパス寄席」は首都圏の大学が収録場所である。

出演する芸人も、「レッドカーペット」や「オンバト」系の
イキのいい若手~中堅が多く、
そしてトリとして、MCも務めるサンドウィッチマンが爆笑をかっさらっていく。

サンドの前に落語家が一席演じるところが、
「NHKの良心」を感じさせるところか。
まあ、番組タイトルも「寄席」ですからね。

…しかしこれがどうもクセモノなのだ。
落語の部分で、明らかに番組のテンションが下がるのである。

たとえば、9月の放送で登場したのはモノマネの「ホリ」、
漫才の「マシンガンズ」、サンドウィッチマン、
そして落語は「三遊亭歌武蔵」であった。

ホリはネタのチョイスを少し見誤って笑いも薄かったが、
マシンガンズは得意のひがみネタでウケた。

その後恒例の企画コーナーで一息ついた後に、
落語の一席である。

歌武蔵は、落語を少しでもかじっている人ならご存じのように、
元力士で現在もでかい体をゆさぶり、一見「飛道具」風ながら、
本寸法の古典をじっくり聴かせる本格派である
(実際は新作も手がけているが)。

この日は風貌に合わせてハードルも下げ、
弱い相撲取りの噺「大安売り」をネタに持ってきた。

それでもそれでも。
学生には、落語はやっぱりキツいんだろうなぁ、と思ってしまった。

なにしろ人気芸人にサンドウィッチされての登場では
アウェー感がハンパない。

この日の歌武蔵はきっちり笑いどころを押さえてはいるのだが、
やっぱり爆発力のある漫才芸よりは、
若い客のリアクションも「薄い」のである。

なにしろ「町内の若い衆さんじゃありませんか」だものなぁ。
こんな言い回し、いまの若者には通じないもんね。
これだけでも、落語の「敷居の高さ」を感じさせてしまう。

落語の前のMCで、サンドウィッチマンと、補佐役の女子学生がトークをするのだが、
「落語を聴いたことはあるの」と聴かれた学生は
「高校生の時に、芸術鑑賞で…」と答えていた。

なんだよ、『芸術鑑賞』って。
要するに「見させられてる」奴じゃねぇか、って話である。

先ほども言ったように、この番組での落語はアウェー感がハンパない。
それこそ無理やり見させられる『芸術鑑賞』なのだ。

またサンドウィッチマンが余計なことを毎回言うんだ。
「これからは『スペシャルタイム』でございます。
生の落語を聴いていただきます」…

「落語は大事な芸能だよ、だから学生の皆さんにも聴いてもらいますよ」
という雰囲気づくりの度が過ぎる。
ますますアウェー感、芸術鑑賞感が増幅してしまう。

落語なんてそんなしゃちこばった芸能じゃないのになぁ。
もったいないなぁ、と思うのだ。

確かに、イキのいい若手の漫才と比べたら、
笑いは少なく、お上品かも知れない。

でも、アナーキーな落語も一杯ある。
新作落語で爆発力のあるネタを見せる噺家もいる。
そこから古典の素晴らしさに入り込んでもいける。

…ウーン、いかん。
こうやって「落語はステキな演芸だ」と若者に力説すればするほど、
かえって「芸術鑑賞」の域に落語を遠ざけてしまうような気もする。

そもそも、「キャンパス寄席」に落語は要らないのでは、とまで思うのだ。

あんなアウェー感、外様感の中で、
笑いにくい雰囲気で落語をやられたんじゃ、
かえって落語のイメージがますます古臭くなってしまう。

ただでさえ熊さん八っつぁんご隠居さん、
長屋に火鉢に一分二分。現代からは乖離も甚だしい世界観。

これに慣れれば落語はたまらなく愛おしく面白い演芸なのだが、
無理に聞かせようとするから落語が敷居高く、つまらなくなるのだ。

学校の芸術鑑賞はとっかかりとしては大事だけど、
「キャンパス寄席」の落語はあまりにねじ込み感が強い。

聴きたい奴が自由に聴けばいい。
落語なんてそんなものじゃないんですか?
大学生にもなれば、自分の見たいもの、興味を抱くものは自分で峻別つくはず。

NHKにはもっと違うやり方で、落語という芸術…いや、演芸を広めて欲しいと、
切に願うのである。

|

« 都会のお約束 | トップページ | さようなら、クボタ民謡お国めぐり »

「文化・芸術」カテゴリの記事

「映画・テレビ」カテゴリの記事

「芸能・アイドル」カテゴリの記事

コメント

学生さんは受けているのですか。それはよかった…
先入観があるのかもしれませんね。
「落語=古い=若者には受けない」という。

見届けることにしましょう。

投稿: たかはし | 2011.10.03 06:36

こんにちは。キャンパス寄席の公開録画に何度か行ってますが、実際はあの時間の倍以上撮ってます。(学生でなくとも見に行けます。喬太郎さんの時は学生以外の人が多かった。)
それぞれの演者さんとのトークは放送ではまるまるカットされてます

2本撮りの事もあり、その際は、落語が2本続きます。実際現地にいるとわかりますが学生さん、かなり受けてますよ。
若手の芸の際はファンの声だけ拾ってる。落語は万遍なく笑いが起き、特に男性の学生さんからは、上手いなぁと声が漏れる。
司会のサンドさんは、落語家さんと交流が深く落語家さんの中にもファンがいて独演会にも呼ばれてますし、ネタをじっくり読むと、時々落語落ちの様なのを混ぜている事がある。
サンドさん自体、いつも収録中袖で見ていて、自分たちのネタの触りで真似する事もある。
キャンパス寄席に落語はいりますよ。
収録を見にこられると分かると思いますが、盛り上がるのはいつも後半、学生さん達との企画もの→落語→サンドさんの漫才。ですから。

投稿: まさやん | 2011.09.28 07:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/17134/52848612

この記事へのトラックバック一覧です: キャンパス寄席に落語は要るのか:

« 都会のお約束 | トップページ | さようなら、クボタ民謡お国めぐり »