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バラエティ番組がなくなる日

主婦の友新書、著・佐藤義和
主婦の友社からリリースされている「なくなる日」シリーズのうちの一冊。

著者はフジテレビの名だたるお笑いプロデューサー軍団の一人で、
「ゲーハー佐藤」の愛称で親しまれた人物だ。

本書にもあるとおり、「笑っていいとも!」の立ち上げにも参画している。

金曜日の人気コーナーだったタモリと明石家さんまの雑談コーナーでは、
そのはげ上がった額と、舌っ足らずの口調を茶化され、
「おいしいんだかだぁ~」と吹き出しのついた似顔絵をタモリがしたため、
それが「サトちゃんシール」として視聴者プレゼントされる、という珍事もあった
(なおそのシールは本書の帯にプリントされている)。

演芸部門の責任者として活躍を続けていたが、50代半ばで現場を解かれ、定年を前に退職。
その後は「フリープロデューサー」を標榜し、
現在は「アクトリーグ」という演劇甲子園のようなイベントに関与しているようである。

主宰するお笑い塾のWEBサイトもあったと記憶するが
現在は消滅しておりそちらについては詳細は不明である。

ということで、「佐藤義和」は久々に聞いた名前であった。

書名は「なくなる日」がついているが、これはシリーズのシバリなので、
そこまで想定して書いてはいない。
むしろ、バラエティ番組へのサトちゃんからのエールととらえるべきである。

宮城県塩釜市の出身(先般の津波の被害からは逃れられなかった街の一つ)。
地元の大学に通いながら、すでに政治の世界に片足を突っ込んでおり、
希望していたテレビ業界に近づくにあたり、
「三塚博」の口添えも少なからずあったようである。
このあたりは本筋ではないのでサラッとしか触れていないが、
非常に興味深いところであった。

卒業後、当時分社化されていたフジテレビの制作部門にアルバイトとして入社。
三塚事務所からは、地元の仙台放送入りも打診されたが、東京に残ることを決心。

ここはさらに軽く流しているが、女性と同棲していたことで
正社員の道が1年遠のいてしまったようだ。(その女性が今の奥さんのようであるが)
いずれ、在籍していた会社はフジテレビ本体に吸収され、
佐藤青年は、「お笑いプロデューサー」への道を突き進んでいくことになる。
(なお「ゲーハー」への道は、アルバイト時代からすでにその兆候はあった模様)

上司であり、「フジテレビ・お笑いの祖」と称される横澤彪については、
52ページ目にしてようやくその名が記される。
横澤についてサトちゃんは、チャンスは与えてもらった、と書いてはいるが、
大いに感謝している、という風でもないようである。

なお、伝説の番組と言われる「THE MANZAI」については、
横澤は生前「自分が生み出した物」としていたが、
サトちゃんは、横澤氏から番組の演出は任されたが、
「THE MANZAI」の名前は自分が考え、
演出やセットは、自分と仲間達で練り上げたものだ、と主張している。

功績争いは横においておくが、とにかく「THE MANZAI」は高い視聴率を獲得、
それが「笑ってる場合ですよ!」「オレたちひょうきん族」に結びついていく。
「万年4位」のテレビ局に過ぎなかったフジテレビが、
これを機に快進撃していくのである。

その後もサトちゃんは、「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!」
「いただきます」「夢で逢えたら」…数々のヒット番組を飛ばしていくことになる。

こうして見ると、サトちゃんは幸運に恵まれた人間のように見えるが、
サトちゃんは「コンプレックス」と「努力」の人である。

横澤彪、三宅恵介…
お笑い王国フジテレビの立役者であるこの二人のことについては、
驚くほどわずかしか記述がないのである。

そういえば、横澤は東大卒のインテリだし、
三宅は花柳社中のボンボンである。

それに対しサトちゃんは、田舎者で、学歴も半端。
しかし自負するように、努力は人一倍していたようだ。

まあ、その努力の一つが、打ち合わせという名目の「ディスコ通い」だった、と聞くと
ガクッとなってしまうのだが…。

いずれ、サトちゃんは「今の世代にウケるものは何か」をリサーチし、
自分が齢を重ねたことを自覚すれば若手に任せ、
「オレだったらこうするのに」という思いを胸にしまい込んででも、
「最先端のお笑い」を送り出してきた、としている。

そして今のテレビマンを叱咤激励するわけであるが、
これは本書を読んでいただくとしよう。
(これ以上あらすじを書いていると本稿がますます長くなる)

矛盾がないわけではない。

今の「情けない」お笑い番組を一刀両断するにしても、
それができあがる下地は、サトちゃんたちが作ったことは否定できまい。
まあ、やんわりとそこに触れている部分もあるけれども。

それと、「SMAPの才能を引き出すことに成功した」と言うが、
いまのSMAPは、サトちゃんが忌み嫌う「特定ファンしか連れてこない出演者」の最たるもののはず。
ジャニタレへの悪口が言えない立場、しかたないとは思うけど、
ややスッキリしない。

ただ、最終章でサトちゃんが散りばめたキーワードは、
いまのテレビバラエティに蔓延する閉塞感を打破するきっかけになる気もする。
「中高年マーケティング」「落語」「風刺」「ジャーナリズム」…。
えっ、それかよ、という単語もあるけれども、
なぜ「昔のテレビは面白かった」「今のテレビは全部同じ」と言われるのか、
そのヒントになるのではないか。

サトちゃんも「テレビはすでにエンターテインメントの首位から陥落した」と認め、
Twitterの優位性などについても言及している。
それでもなお「テレビを愛するテレビマン」として、
もう一度テレビが輝くために、何をすべきなのか、
「老テレビマン」は、力強く、提言するのである。

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