« 不来方名人寄席2011 | トップページ | クイズ・フロンティアハンター »

放浪したい月曜夜9時

「俺たちの月9」…愛好家はそう呼ぶ。
BS-TBSで月曜夜9時放送「吉田類の酒場放浪記」。
全国の酒場を「酒場詩人」吉田類が飲み歩く番組である。

駅にふらりと黒装束が、ヒゲを生やして降り立てば、
街をさまよいお店を見つけ、お菓子をポリポリついばんで、
空の陽もまた、暮れにけり。

思わず七五調になってしまったが、
そんな優雅な番組なのである。

なぜこの番組が人気があるのか。
それはひとえに「酒場カタルシス」なのだろう。

現代人はそんなに酒場には行かない。
行ってれば夜の9時にこんなTV見てないだろう。

行ったとしてもチェーン系で、行きたくもない同僚や諸先輩方に
ちまちま気を遣いながら、
中国加工の安い料理で腹を満たすのが関の山である。

かといって、自宅では女房にあんた飲み過ぎよ、と言われながら
ごく家庭的な「晩ご飯」で晩酌し、
ほろ酔いのところに、娘の一言「パパ、クサい」…なんて御仁が多いだろう
(アタシは吉田類御大と同じ独り者なので想像ですが)。

ひとりでふらりと酒場を訪れ、煮込みにホッピー、シロにハツ。
「ぬる燗ひとつ」なんて、言ってみたいものだが、
現代人にあの酒場って奴は敷居が高いのだ。

それを吉田は、「では行ってみましょうか」とかいいながら
気軽に扉を開ける。我々視聴者が開けられない「夢のドア」をひらき、
未知の世界へ連れて行ってくれる水先案内人である。

吉田の振るまいは嫌みが無い。
あの年代の男にしては妙に大人しく、ニコニコしている。
(クネクネ、ニヤニヤと評する人もいるが)

あの年になればもっとふてぶてしくもなりそうだが、
吉田は敬語しか使わず、「あのー」「そのー」と総じて遠慮がち。

うんちくもあるのだろうが、さほど発露するでもなく、
回りのパッとしない客との会話を楽しむ。嫌みが無い。

どうしたって褒めようもないポテトサラダを、
さもうまそうに食んでいる姿には、親しみがわくのだ。

しかし吉田類という人は、実はただのひげおやじではなく、
俳句にイラスト、登山に自然愛好家…
粋人を地でいく現代の一茶のような人物なのである。

そんな多芸っぷりを小出しにして、「近所のおやじ」とは一線を引くあたり、
実に戦略家である。この真っ黒おやじはどんな人物なんだ、と
気にさせてくれるから、毎週見ていて飽きさせない。

15分間の1ユニットの最後、吉田が披露する俳句もまた奥ゆかしさがたまらない。
ときどき意味が分からない句もあるが(笑)、
背中を見せて宵闇に消えていく吉田の背中から、
「TVの前の君、ボクの領域にはまだ達していないようだね、フフフン」と
言われているようで、なんとなくくやしく、しかし愛らしいのである。

BGMも気が利いている。
オープニングテーマは「Egyptian Fantasy」、のんびりした雰囲気が心地いい。

いっぽう、昼のシーンでは80~90年代の洋楽が使われ、軽快さを演出。
店に入る夕刻には一転して洒落たジャズ、
そしてエンディングはエイモス・ミルバーン、1950年代にまでさかのぼってしまう。
そう、BGMがだんだんとオトナになっていくのだ。

そこへ来ての「俳句」。
粋人になるには、どれだけの盃を乾かさなければならないのか。
来週もまた、「月曜日の酒場」が楽しみになる。

ほんとうは吉田としても「TVをご覧の皆さんも、
近所の酒場に行ってみて下さい」、と伝えたいのだろう。

俺なんかまだあのレベルじゃないしなぁ…と尻込みしながら、
「大五郎」のお湯割りをちびちび呑んで、
カタルシスにふける視聴者が、実は大半だと思う。
それじゃダメじゃん。

|

« 不来方名人寄席2011 | トップページ | クイズ・フロンティアハンター »

「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/17134/50935729

この記事へのトラックバック一覧です: 放浪したい月曜夜9時:

« 不来方名人寄席2011 | トップページ | クイズ・フロンティアハンター »