異常なる音楽評論シリーズ4・その2
本題に入るのをすっかり忘れていた。
「美川憲一ツインパック」のご紹介である。
同じような名前のCDはいろいろあるようだが、
今回ご紹介するのは、「スカーレット・ドリーマー」が収録されているものだ。
「スカーレット」については前回ご紹介した曲である。
都倉俊一によるスーパー和風ロック歌謡とでもいおうか。
この「ツインパック」は、おおよそシングル(EP)リリース順に収録されているが、
聞きどころはDISC-1後半からDISC-2前半と考える。
DISC-1前半はサックスむせび泣く「ブルース歌謡」が多く若い世代には少々ヘヴィー。
DISC-2後半はやおら演歌に傾倒していくきらいがあるのでこちらもきついかも。
その中間であるDISC-1後半からDISC-2前半は70年代後半から80年代前半。
ロック歌謡、ムード歌謡、演歌…いろいろなジャンルに挑戦している「混沌」がいい。
とくに、DISC-1最終トラックの「駅」は「スカーレット」の次にお気に入り。
あまりヒットした曲ではないようだが、
女の悲しみを低音と裏声を巧みに使い分けて表現する美川の力量もいいし、
女声コーラスによるヴォイスインストゥルメントも秀逸。
また、この時期は美川ならではの「暗さ」も魅力だ。
「お金をちょうだい」「一番列車の女」「駅」では男を捨てる女。
さらに「三面記事の女」では自殺未遂を犯す女まで歌う。
なお、聴いていると分かるが、DISC-1では半数程度の曲で、
近年の収録と思われるバージョンが収録されている。
「柳ヶ瀬ブルース」「おんなの朝」「さそり座の女」などがそうだ。
それらの曲を聴けば分かるが、
最近の美川は音程が合わなくてフラット気味に歌う傾向がある。
それもまた、ウェットな雰囲気作りに生きている感じがする。
まさに「枯れた味わい」と言おうか。
最近はテレビの司会にも挑戦している憲ちゃんだが、
紅白で衣装対決するだけが憲ちゃんじゃない。
「女の悲しみ」を歌わせたら日本一の「男性歌手」なのだ。
(追記)06/3/5
アクの強い「スカーレット・ドリーマー」「三面記事の女」作詞者は
「小谷夏」、3月2日に亡くなった演出家の「久世光彦」のペンネームだそうだ。
ほかには「時間ですよ」の浅田美代子や、天知真理にも詞を提供している。
「パーマンはそこにいる」も小谷夏作詞なのだが、
やはり久世が書いたのだろうか?
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