バックアップとしての東京タワー

東京スカイツリーがオープンし、
一気に「日陰の存在」に押し込まれた、
東京の象徴だった『東京タワー』。

表向きは気丈な東京タワーだが、
今後、入場者減なども見込まれ、大変だろう。

そもそもスカイツリーは、
首都圏の電波塔としての東京タワーが
やや力不足になってきたことを要因として
設立された、ということだが、
実際には現在でも東京タワーで十分ではないか、とも聞く。

スカイツリーの所有者である東武鉄道も
「観光施設」としての機能に重点を置いているようだ。

地上デジタル放送などは、近々スカイツリーに機能が移るが、
東京タワー内の送信用設備も「バックアップ施設」として残るという。

東京タワーは「バックアップ」としての存在になっていくのだろう。

観光施設としてもそうだ。
東京タワーは一時来場者が減ったが、
現在は回復傾向にあるようだ。

「東京の地元民は来ない」と言われていた東京タワーだが、
「おのぼりさん用」としての方針を改め、
展望室内でライブを開催するなど「普段使いスポット」に重点を置いているという。

スカイツリーは初日、雨にたたられ、
風で展望室行きエレベーターが止まるなどさんざんであった。

エレベーターはかなり速度があるため、
少しでも風が強いと止めざるを得ないようだ
(初日は「大事をとって」の停止だったようだが)。

そうなると、俄然、東京タワーの存在価値は高まる。
観光施設としてもバックアップとなるのだ。

確かに高さはスカイツリーより低いが、
周りの建物と比べれば、まだまだ圧倒的に高い。

「王者」としての戦いから、
「2位」「スーパーサブ」としての戦いにはなるが、
東京タワーの価値はまだ、333メートルの位置にあるのだ。

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醜いなんて言いたくない

東日本大震災の被災地で発生した瓦礫の焼却準備が全国で進んでいるが、
北九州市では、瓦礫の「試験焼却」を妨害しようと、反対派市民が集結。

運搬トラックの下に回り込むなど抵抗し、警察ともみ合いになった結果、
男性2名が公務執行妨害で逮捕される事態となっている。

テレビでは、女性が横たわって半狂乱になって
「燃やさないでくれー!」と叫んでいる様子が映し出された。
テレビの好みそうな、エキセントリックな場面であった。

集結したのは『市民』というがおそらく地元民ではない人間、
いわゆる『プロ市民』が大半だろう。

反原発、反瓦礫の強硬さにはもうあきれはてている。
あきれてものも言えない、というか。

Twitterでは「東北の皆さん、これが復興を妨げている人間の醜い姿です」
なんて表現している人もいる。

確かにそこまでなじりたくもなるけれども、
彼らにとっては逆にその罵詈雑言が勲章になる。
そして意固地になって、結束を強めていくのだ。

迫害されればされるほどに、『確信』を強め、
そしてパーティ同士の『絆』を強めていく。

以前も言ったが、もうある種の『宗教』である。

反対派は「測定しているというが、信用できない」と主張している、と言う。
何も信用できないようでは困る。

一度被災地(岩手県・宮城県・福島県等)を訪れてもらい、
被災者と語り合ってみてほしいのだが…。
「その手は食わない」なんて言われたら、もうどうしようもないけど。

とにかく対話、対話、対話。これしかない。
「これが復興を妨げている人間の醜い姿です」なんて、
醜い表現は、もう使いたくないんだよね。

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2500万円

競馬評論家の須田鷹雄が、
WIN5」というJRAが指定する5レースすべての1着を当てる、という
ゲーム性の高い馬券を的中させ、2500万円を獲得していたことが分かり、
写真週刊誌で報道されて、話題になっている。

一般人ならまず自分でゲロはしないと思うが、
そこは東大卒の頭脳、自ら発表した方がいい、と
ブログで「ご報告」しており、
税金は意外に高くない」といったことも記している。

普段からローテンションで売っているだけに、
基本的には冷静さを保っているように見受けられる。

「大金を手にしたリスク」が頭をもたげているのかも知れない。
宝くじに当たった男がみるみる不幸になっていく、
なんていう話はごまんとあるものだ。

数億円ならまだしも、2500万円(マイナス税金)なんて、
うっかりしていれば、日々の活動、私生活でなくなってしまう。

そして、「競馬評論家」、しかも自ら馬券を買う評論家なら、
これまでも、そしてこれからも、そのくらいの金額は「溶かして」いるものだ。

須田自身、フィーバーするどころか、テレビ出演後に
早晩、日本の競馬は滅びていく」なんて、
センチメンタリズムに浸っているくらいだから…。

競馬なんかもうかるものじゃない。ロマンを買うものだ。

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だいじょうぶ?東北六魂祭

昨年、東日本大震災を受けて、仙台市で開催された「東北六魂祭」。
東北6県の県庁所在地の祭りが一堂に会する、というものだったが、
急ごしらえのイベントゆえの運営の不手際が指摘された。

第2回となる今年は来週26日・27日に盛岡市で開催される。

しかし盛岡市民の感想としては、
「盛り上がってないな」というのが正直なところである。

会場となる市街地に立ち入っていないというのもあるが、
テレビなどのメディアなども、CMは放送するのだけど、
特集番組を組むわけでもない。

むしろ「交通規制」などの、市民にとってはネガティブな話題が
盛り上がっているな、という印象がある。

そもそも、ほんとに開催されるの?とすら思う。
あの青森のねぶたも来るというのに…。

新聞記事によれば、パンフレットすらできていないという。
「直前にならないと分からないことが多いので、
WEBでの案内にとどめている」と。
そのWEBサイトも、ほんとに必要最低限のことしか書いていない。

プロデュースしているのはあの「電通」だそうだが、
電通がこのていたらくか? 首をひねりたくなる。

もう、わざとこういう運営にして、
東北のイメージをさらに悪化させたいんじゃないかと、
「電通陰謀説」まで勘ぐりたくなるほどだ。バカバカしいけど。

東京のメディアでもあまり話題にしてくれないようだし、
昨年のようなパニックは起こらないのかな…と
安心するような、でも残念なような。

ただ、首都圏の電車広告などでPRはされているようだ。
Twitterでは「盛岡のホテルをあらかじめ3部屋とっておいたが、
2部屋キャンセルするので誰か泊まる?」なんて書き込みしていた
ほとんどマナー違反の強者も見かけたし。

でも、東北六魂祭はほんとに開催するんですよね?
地元民としても、興味ないわけじゃないんですよ。

(追記)この記事をアップした後、市街地に行ってみたが、
六魂祭の存在を示すようなものは見られなかった。
子供が「六魂祭」のうちわを持っているのを見かけた程度だった
(そのうちわはどこで配られていたのかは不明)。

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大胆な大人になる

ちっちゃいことは気にすんな、と言っていた芸人がいた。
どこ行ったんでしょうね。まあ、どうでもいいですが。

ブログでもTwitterでも、50代以上のユーザーで、
異様に誤字が多い記述を繰り返している人が見られる。
しかも「有名作家」とかに限って誤字が多かったりするからたちが悪い。

しかし、誤字脱字はもはや枝葉末節であってどうでもよく、
伝えたいことを伝えられればそれでいいのかもしれない。

街の様子を伝えるテレビ番組なんかで、
70代以上の経営者のお店で、
もうめちゃくちゃな内容の張り紙が、
店の前にベタベタ張られてたりする例を、けっこう見かける。

「こりゃ常連じゃないと気味悪くて近づけないよなぁ」と
思うけれど、それで商売うまくいってるんだし、
ベタベタ張り紙だろうがなんだろうが、
常連とうまく意思疎通できればオールOKなわけだ。

人間年を取れば、細かいことを気にしなくなる。
それじゃまずいだろ、という人もいるけど、
細かいことばかり気にしすぎて全体をダメにすることは、よくあること。

ことわざにもあるでしょう。
「木を見て森を見ず」
「角を矯めて牛を殺す」…。

大人になるというのは、大胆になる、ということなのかもしれない。
若者だから大胆とは限らないのだ。

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好調・テレビ朝日

テレビ朝日が絶好調、と毎日新聞。
現在、テレ朝と毎日で美術イベントを共催しており、
ご祝儀記事という気もするが…。

日テレとフジの積年の争いに割って入り、
4月の「視聴率4冠王」を獲得。
テレ朝が調子よいことは間違いない。

4月の改編も、他局が大なたを振るうなか、
あまり手をつけなかったことは記事にあるとおり。

テレ朝は、日テレがフジに追いつき始めた90年代、
「ニュースステーション」の好調にあぐらをかき、
本来のドル箱であるバラエティ番組をほとんど作っていなかった。

そんな中で、11時台の「ネオバラ」を端緒とし、
バラエティ作りに取り組みはじめ、
現在では「アメトーーク」「ロンドンハーツ」の加地倫三ら、
優秀なスタッフが育っている。

制作費低減を理由に立ち上げた「お願い!ランキング」も
「ちょい足し」ブームを起こすなど話題となり、
深夜帯の視聴率底上げにも貢献している。

ただ、今回の4冠王は、
特番ラッシュやスポーツ番組が寄与したもののようで
毎日新聞の過去の記事)、
「地力」が発揮されたとはいいにくいようだ。

日テレもフジも苦しんでいるし、TBSは「窮地」の状況。
敵失によるところも多い。

朝の時間帯においては「やじうまテレビ」「モーニングバード!」は
完全にNHK・日テレ・TBS・フジの争いに埋没する状況で、
90年代から、テコ入れをずっと繰り返し改善する気配もない。

テレ東以外はすでに撤退済みの「ゴールデン帯アニメ」も、
「ドラえもん」「しんちゃん」を守りたいプライドが許さないのか、
なかなか撤退できずにいる。

まだまだテレ朝が「真のトップ」を取るには、
時間はかかりそうだが、
それでも、この4冠王がきっかけになるのは間違いない。

人気者をキャスティングできなかったフトコロ事情を逆手に取り、
不況にあえぐ我が国において、
カネのかからない番組づくりで浮上したテレ朝。
頂点はもうすぐそこに…?

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被災地の現実

「被災地の現実」とは大仰なタイトルだが、
たいした話ではない。

1年経過してようやく、岩手県内の被災した市町村を全部回ることができた。
仕事で、最北の洋野町から、最南端の陸前高田市まで車で南下したという、
ただそれだけのことである。

被災地と縁がない人は、「惨状」を期待する向きもあるのかも知れないが、
実際には、かなり復興は進んでいて、
産直やショッピングセンターにはお客がいっぱいいた。

ただ、津波に襲われて建物が破壊された地帯は、
ほとんど更地になっていて、
再び建物が立つ見込みはなさそうである。

ところどころに残った建物に、飲食店が入っていたりするが、
回りには何もないので、よけいに目立つ。

高台移転も進んでいるといい、
震災前に戻る、ということは当面ないのだろう。

コンビニなど、仮設の商業施設はプレハブが多い。
役場がプレハブになっているところもある。

中に入ればプレハブというのを意識することはないが、
外から見ればプレハブなので、「仮設の町」という印象はある。

ショッピングセンターに、通常入ることがないであろう、
行政施設や金融機関などが入っているケースもある。
イレギュラーな状態、というのをここからも感じる。

商店街は、先述通り流されてしまっている家屋が多いが、
まだ撤去されずに残っているものもある。
もう壊すしかないようなものも、まだ残っている。

そして「がれきの山」。
野球場や広場、ゴルフ練習場などが置き場になっている。
このがれきは、どこへいくのだろう…。
このがれきがなくならないうちは、復興も進まないだろうが、
まだまだその山は高い。

波にさらわれ、住宅の土台だけが並ぶ「更地」に、
菜の花が咲き乱れる様子は、なんとなく胸を締め付けられた。
しかしそれは希望の花でもあるのかもしれない…
よそ者の無責任でちんけな言い回し、と笑われるかもしれないが。

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打ち切りのうた(3)

(前回はこちら)

スカイツリーにほど近い場所に車を停め、
直子とあたりを散策する荻下。

サングラスにマスク、ヘアウィッグに帽子、という重装備。
痩躯をごまかすために、羽毛のたくさん入った地味な上着に着替え、
少しダサめなコーディネートに仕上げた。

スタイリッシュさで売っているだけに、
あまりオシャレにするとバレてしまうからだ。
その格好は、近くを歩いていた子供からも指を指されるほどだったが、
荻下亮だ!と言われるよりは百倍マシだった。

直子と手をつなぐ荻下。
目の前にはそびえたつスカイツリー。
ひとときのおのぼりさん気分を味わう二人。

その横を、ひとりの女性が通った。
主婦の千恵だ。
スーパーの袋を手に、自宅に帰るところだった。

いつも通る、スカイツリーのよく見える場所で、
カップルが仲むつまじくスカイツリーを見つめている。
いつもの光景…のはずだった。

春なのに、やけにモコモコした服装の男の手元を見ると、
どこかで見たような指輪をしていた。
棒が3本並んだような、はめにくそうな、ほかにないデザインの指輪。

そう、雑誌のインタビューに応える荻下亮が、
カメラに向かって見せつけていたシルバーアクセサリーだった。

「ン!?」
千恵は不思議に思った。
あんな指輪をする人は、他にいない…。

もしやあれは、リョー様なの?
隣にいる女は誰? 樫木優衣じゃないよね…。

突然、高鳴る心臓を抑え、千恵はスーパーの袋を手にしたまま、
二人の前に回り込んだ。

間違いなかった。特徴的なあごのラインは、マスクでも隠しきれなかった。
ああっ!という顔をした千恵。

へんなオバさんがいるな、と思っていた荻下だが、
そのオバさんの驚いた顔に、気づかないはずもなかった。

「行こう」直子の手を引き、荻下はその場を立ち去った。

千恵もその場を察し、それ以上は近づくことはなかったが、
その場にへたり込んでしまった。

あんなダサいかっこうをして、女と浮気するなんて…。
千恵の脳内に築かれていた「オギシタ城」が、一気に崩れ去った瞬間だった。

千恵が「ニュースキャスター家族」の第6回を見ることはなかった。
そしてもっと悲しいことがあった。
千恵の家には、視聴率を計る機械が取り付けられていたのだ。

月曜日発表された「ニュースキャスター家族」の視聴率は「2.7%」だった。
とうとう3%を切ってしまった。

しかし、打ち切りの報道で満足した各マスコミは、
この事実を小さく伝えたのみだった。

もうどうでもよくなった荻下はさらにぶっとんだ芝居を見せ、
悪のりしたスタッフがNGテイクまがいのカットをどんどん取り入れた第7回は、
業界でも少し話題となった。あの荻下亮がとうとうすごいことになったぞ…。

最終回の撮影が終わり、クランクアップ。
「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけられ、
夜7時から、スタジオ近くの高級ホテルのバンケットルームに場所を移しての打ち上げ。

酒に強い荻下は飲みに飲みまくった。
「力不足で…」「不徳のいたすところで…」と恐縮するスタッフを尻目に、
「いやいや、ボクの勉強不足ですから」と、殊勝で慇懃な態度に終始する荻下。

ペコペコするスタッフをなだめながらも、目が据わらぬ荻下であった。
さすがに、したたかに酔った。

その勢いで、タクシーに乗った荻下は、
自宅ではなく、新座にタクシーを向かわせた。

2万円近いタクシー代をポンと払い、
直子の部屋に入り、床に倒れ込む荻下。

「酔った…疲れた…寝させてくれ。自宅(いえ)はガキがうるさいんだ」

直子が言う。
「今度、正社員になるんだ」

「そう…それはよかったね」
荻下には、直子の出世など興味はなかった。

気のない返事を聞いたあと、直子が次に言った言葉こそ、
荻下を揺さぶる言葉だった。

「あのね…できたみたいなの」

「できた。できた…って、えっ」
答えは一つだった。
私生児が出てくるドラマを地でいく展開を、荻下は実践してしまったのだった。

酔いは覚めず、むしろ増幅し、
荻下の脳みそはかき混ぜられていった。

その晩、優衣は赤ん坊を抱きながら、安寧の夜を過ごしていた。
もう、夫がいない夜は慣れていた。

「ニュースキャスター家族」最終回を、
荻下は妻・子といっしょに見ていた。

荻下演じるキャスターは、私生児全員に父親となる男性が見つかったことで、
ひとりの生活を取り戻すのだが、寂しさを抱いて眠る、というラストだった。

「あなたの演技以外は、面白くなかったね」…優衣はそうつぶやいて、
テレビのリモコンで電源を落とした。

「実は、話があるんだ」荻下はそう切り出すと、
愛人の存在と、「私生児」の認知を妻に話した。

「もう、分かっていたよ」。優しく語る妻の慈愛に満ちた言葉に、
安心して、ため息をついた荻下。
「ふぅ」

その頬に、優衣は力一杯の平手打ちを見舞った。
激しい音に、なぜか赤ん坊は歓喜の声を上げるのだった。

その頃、残業中だった直子に、ニューヨーク転勤を上司が告げた。
千恵はすっかり、裏番組のドラマにハマっていた…
それぞれの日曜夜9時があった。

(完。この物語はフィクションです)

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打ち切りのうた(2)

(前回はこちら)

そして優衣はもう一つ、夫のある行動を見抜いていた。

子供ができたというのに、帰宅時間が遅いのだ。
ドラマの収録は、スタジオの都合で必ず夜10時には終わる、と
プチテレビの知り合いから聞いていたのだが、
荻下はほぼ毎日、深夜、ひどいときには翌朝の7時になって、帰ってくるのだ。

「ディレクターと飲んでいたんだよ」。
荻下はヘラヘラ笑いながら、シャワーを浴びに浴室に直行する。

おかしい。
夫の酒の強さは有名だ。
それなのに、酒のにおいがほとんどないのだ。
そのくせ、酔ったような芝居をする。

「女がいる」…。優衣はなんとなく、思い始めていた。
演技力でならした荻下も、妻には大根芝居しか見せられなかった。

場面は変わって、
スカイツリーの見える墨田区京島の住宅街。
特撮番組の頃から荻下のファンを長く続けている
主婦・波本千恵の自宅アパート。

当然日曜夜9時に見るのは「ニュースキャスター家族」だ。
リョー様、とつぶやきながら、画面に見とれる28歳。
夫は隣でスマートフォンをいじり、子供は部屋でテレビゲーム。
家族のコミュニケーションなど二の次。
唯一の楽しみが、荻下のドラマを見ることなのだ。

スーツを着てキャスター役を務める荻下は新鮮で、
千恵にとってはまさに日曜夜9時は夢の時間であった。

第4回の視聴率が月曜に発表された。
「3.1%」。これはもう奇跡である。

砂嵐を流してもまだこれ以上取れるのではないか、と揶揄され続けて
1週間が経過。
土曜日に、プチテレビの編成局で緊急会議が開かれた。

マスコミにも散々揶揄され、これ以上恥の上塗りはできない。
スポンサーも継続は困る、と言ってきており、
打ち切りやむなし、の空気が大半を占めた。

しかし、バラエティなら即刻打ち切りもできるのだが、
ドラマではそうはいかない。
撮影は進んでいるし、脚本もできている。
俳優陣のブッキングも向こう数回分済ませている。

それよりなにより、いきなりの打ち切りはドラマでは不可能だ。
視聴者に説明ができないし、のちのDVDソフト化もできなくなる。
バラエティのように「今週で終わります」のテロップを最後に出して
済ませるわけにはいかないのだ。

結局、11回シリーズの予定を短縮し、第8回で終了、という形を取ることとなった。
幸い、執筆済みの脚本は第7回までしかなく、
第8回で物語を収束させることで決着がついた。

当然この決定は他のマスコミを通じて報道されることになった。
折しも日曜の朝だった。
その夜には「ニュースキャスター家族」が放送される。

話題作りで、少しでも視聴率を上げ、
スポンサーへの体裁を整えたい、プチテレビの思惑もあった。

しかし、打ち切りが決まったドラマを
いまさら見ようと思う視聴者がどれだけいるか。

普段芸能ニュースにはほとんど興味がない千恵も、
友人からのメールでこのことを知ることになる。

がっかりした千恵だが、その日の晩もドラマを視聴した。
「リョー様がかっこいいことには変わりない。あとでDVDも買うし」。

次の日。視聴率は少し持ち直したが、3.5%と
相変わらずの冴えない数字にとどまった。

打ち切りが決まり、荻下も少し吹っ切れたようだった。
その日も撮影はあったが、打ち切りを冗談にするほどで、
肩の荷が下りたかのように、私生児役の子役と戯れるのだった。

荻下の撮影は午前で終了した。
午後は仕事がなく、帰宅すればよかった。

しかし荻下は、撮影スタジオ地下の駐車場に停めてあった
シルバーのアルファロメオに乗り込むと、携帯電話で話し始めた。

相手は、荻下の愛人だった。

年齢は24歳。一回り下の年齢の、映画会社契約社員の女性・直子。
撮影で知り合い、自然に恋に落ちたのだ。

直子の住む、埼玉県の新座に、アルファロメオは向かった。

新座に芸能マスコミが張り付くはずもなく、
荻下は安心して、直子のいるマンションの一室に消えていった。

早くから父を亡くしていた直子にとって、
荻下のような頼りがいのある男は、恋人であると同時に、
父親のような存在でもあった。

直子のような若い女性がひとりで住むには
いささか不釣り合いなマンションに住めるのも、
荻下の存在があればこそだったし、荻下としても、
第二の自宅のように、落ち着く空間だった。

どうせなら都内に住まわせたほうがいいのだろうが、
新座ならワンクラス上のマンションに住めるし、
なによりマスコミの目が届きにくい。
直子も納得づくだった。

荻下が直子との愛を確かめ合っていた午後のひととき、
都内の荻下の自宅では、優衣がぐずる赤ん坊をあやしていた。
いつまでたっても泣き止まぬ子。一番悩ましい時期である。

荻下は撮影中だ、と優衣は聞かされている。
さすがにこの日ばかりは、知己のスタッフと口裏を合わせたのだった。

数十万円はする薄手の革のジャンパーを再びはおる荻下に、
直子は「スカイツリーを見たい」と言った。

高層ビルの建ち並ぶ直子の職場からは、
とうていスカイツリーなど見えない。

夜の方がいいじゃないか、と荻下は言ったが、
夜だとかえって目立つから…という直子の言葉に納得し、
荻下は直子を乗せて、都内へと向かった。

つづく

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打ち切りのうた(1)

(これは、実際の出来事・作品を元にしたフィクションであり、
ほぼすべてが、創造した虚構の物語であります)

とあるドラマの打ち切りがスポーツ紙を賑わせる。
プチテレビ・日曜夜9時「ニュースキャスター家族」である。

主演は荻下亮。36歳。ファッションモデルのような容姿と
陰のある表情で支持を集める中堅俳優である。

このドラマは、その荻下演じる新進ニュースキャスターのもとに、
20代の頃、若気の至りでこさえた私生児たちが次々と現れ、
荻下を翻弄していくというホームコメディである。

実は似たようなプロットのドラマ「パパのうた」が、
80年代に製作され、大人気となっていた。

「ニュースキャスター家族」のスタッフは、
そんなことは百も承知であった。
そう、「わざと似せたドラマ」にしたのである。

パクられたほうの脚本家も、番組開始前から、
公式サイト上で遺憾の意を表明するほどの似せ具合だった。

「パパのうた」の主役はミュージシャン、
こちらはニュースキャスターで、全然違います…
そう主張して、脚本も少し書き換えると約束して
(実はこれも最初から決まっている)、丸く収めた。

さらにプチテレビの編成部長が、抗議した方の脚本家と一献交わし、
「1年後にオファー出しますから」と確約すると、
脚本家の方も自営業ゆえ、ホコを収めるのであった。

「いい遺恨試合だったな…」。
編成部長は、帰りのタクシーの車内で、ほろ酔いのままほくそ笑むのだった。

プチテレビの日曜夜9時は、
大阪の系列局が製作する情報番組が不祥事で打ち切られて以来、
何の番組を作っても長続きせず「呪われた枠」とまで言われていた。

起死回生を狙ってドラマ枠に転換。
裏番組にも、数十年の歴史を誇るドラマ枠があったが、
そこにあえてぶつけたのである。

…しかしプチテレビ自身の不振もあり、
さほど好調とは言えない枠だった。

プチテレビとしては、荻下よりも格上の俳優を起用したかったが、
子供向け特撮で人気を確立し、
人気女優をめとって「美男美女夫婦」としての誉れも高い荻下を、
コミカルなドラマに挑戦させることで話題になるだろう、
と踏んだのだ。

しかし、目論見は大きく外れる。
先述の裏番組が、荻下よりも確実に格上の人気アイドル
(といっても40近いのだが)を主演に据えたドラマ作品で、
勝負を仕掛けてきたのだ。

SFチックな演出だが、どこかコミカルさも感じる作風で、
「ニュースキャスター家族」よりも一枚上手だった。

やられた…。
編成部長は裏番組の第1回を見て、頭を抱えた。
「あっちのほうが、おもしろいじゃねぇか」。

その裏番組ドラマは2回目以降、視聴率を下げたが、
「ニュースキャスター家族」のほうはもっとひどかった。

第1回6%台。これもむちゃくちゃだが、
次の第2回で3%台に下げた。
これは、平日午前中の番組よりもひどい数字である。

スポンサー、テレビ局、広告代理店の担当者…
皆、その視聴率にただただ呆然とするばかりだった。

一番ショックを受けたのは、主演の荻下だった。
第3回も視聴率3%台に沈み、
いよいよ週刊誌やスポーツ紙が興味本位で取り上げ始めた。
「歴史的低視聴率」「人気俳優も地に堕ちたか…」。

荻下は自分の演技には自信を持っている。

子供向け特撮から、時代劇、
超大御所映画監督のメガホンによる映画まで、
芸の幅広さが自慢だ。

確かに「薄く広く」とは言われがちだが、
「まずまずの結果を出す男」として業界では名が通っている、
と自分でも思っていた。

それがいまや「低視聴率番組の顔」である。
インターネットのスポーツ紙のサイトでも、「低視聴率」の文字の下に、
必ず自分の顔写真が入る。

荻下は思わず、Macノートの画面を閉じた。
「ふぅ」

そのため息を聞き、妻が「どうしたの?」と問いかけるも、
荻下は自室にこもって物思いにふけるばかりだった。

妻もまた人気女優の「樫木優衣」であった。
昨年には女児も出産し、現在は子育てに専念している。

優衣とて女優だから、荻下のドラマの不調くらいは知っている。
しかし荻下はあまり感情を表に出さない男なので、
夫に合わせていちおう、知らないふりをしたのだ。

つづく

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